iPhone物語り

iPhone物語り
(魂は、クラウドの中に〜Soul in the cloud<題:アスキー遠藤諭、英語題:柳瀬>)



いつも、境さんに、
辛口だ、と言われるので、たまには、甘いのも。
iPhone4 予約日記念です。(私は、しばらく3GS)

フィクションです。
ま、ある意味Apple的、クラウド論なんですがね。



ーー iPhone物語 (魂は、クラウドの中に〜)ここから ーー


私は、宮地信子、45歳。先週、夫が、交通事故に巻き込まれ、
無念の死をとげた。


子供も、いなかったから、悲しむのは、私くらい。
もう、涙、出きったから。


そうそう、あれあれ。


警察から、遺品と言って渡された、iPhone


「奥さん、あれだけの事故の中で、こいつは、無傷っすよ。」

なんて、無神経な、人なのかしら。


電話機なんか、あの人いなかったから、意味ないじゃない。


あの世と、つながってるとかね。

な、わけ、ないか。


電源は、これかしら。

まあ。パスワードだわ。



私は、彼にまつわる番号を、
2日間
入れ続けた。


なんで、こんなことに、私、一生懸命に、なってんの?

ばっかみたい、私。


私、

わたし?


私の誕生日ー、2月15にちー。

0215。


イヤだ、私の誕生日だわ。


あなた、ごめんね。

みるわよ、中身。


電話履歴、
やだ、会社と、私だけじゃない。


メール履歴、
やだ、私だけじゃない。


写真。

あの人、デジカメとか
持ってないし、
どうせ、からっぽよ。


なに、これ。


ほとんど、私だけじゃない。
いつのまに、撮影したの?


twitbird
あの人、鳥は、嫌いだったはず、だけど、
なに、これ。


宮地さーん、返事してください。って、なに、これ。
なんで、こんな多勢の人達と、やりとりしてたのかしら。

こんなこと、やってたんだ。あの人。


foursqure
四つ角?


なに、これ。あの人が、行った場所だわ。
あの人、こんな、まめだったかしら。

TIPS
いつか、信子と、また、来よう。
ってのが、いっぱい。


twitcasting
なに、これ。

あの人の声だ。

「のぶこー。今度、いっしょに来ようなー」
同じようなビデオばっかり。


Flickr

「いつか、信子と」
妙なアルバムタイトルね。


私は、電話機の中の、小さな四角をあけ続けた。
ずっと、あけ続けた。


あの人の、すべてが、この中にいた。



そして、決心した。


明日から、
あの人のiPhoneと、
いいえ、「あの人」と一緒に旅に出ようと。


それが、あの人の夢だったから。


iPhone物語り

(魂は、クラウドの中に〜Soul in the cloud)
終わり



PS
アスキーの遠藤さんが、タイトルをつけてくださいました。

題をつけたら最もらしくなって、泣けてきました。うるる、うるる。


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