iPhone物語 2


iPhone物語 2


ゴミみたいなトラックバック記念ということで、
http://d.hatena.ne.jp/elm200/20111009/1318149419


昨年、おっさんだけに、好評だった、iPhone物語
だが、引き続き、facebookに予告したように、書いてみる。


書こうと思った理由は、知り合いのおばさんが、
iPhoneのことを「このパソコン、小さいわね」と言って、
私が、「そうなんですよ。電話もできるし、写真とかビデオも撮影できるんですよ。でも、これ作った人、今日亡くなったんです」
「あら、とても惜しい人を、なくしたわね」
と対話したいきさつからで。


子供の成長記録とかは、アナログの時代は、別々に管理して、
別々に置いてあったので、
アルバム写真は、普通に棚に置いてあったし、
お父さんの死んだあと、Video8のテープが出て来たりした。


ホームパソコンの時代が来て、そういった思い出記録が、
そこら中に氾濫することはなくなったが、まだ、
HDDビデオカメラからのDVDがあったり、PCを覗き見れば、
そこにあったりした。


でも、iPhoneから、クラウドですべて扱えるようになると、
そういった記録物や、日記的なものは、肌身離さず持っている
iPhoneからしかアクセスできない、超パーソナルな鍵の奥に
しまい込まれることになってしまう。


この物語は、今、娘が生まれて記録を取り始めた人の記録を
本人が死んでから、始めて見せつけられる娘、おおよそ20年後くらいの
物語という設定です。



"--------- iPhone物語 timeline編--------------------------

あたし、山根洋子 18歳。

大学生になったばかりで、親父死んじゃったし。
蜘蛛膜下出血だって。
かーーーっ。かんべんしてくれよ。


あたしの人生、これからだっつーのに、なんだよ。まったく。


でも、親父って、もう何年も、口聞いてくんないし、
あたしのこといつも、変な目で見てたし、なんだったんだろうな。


肩身のiPhoneをさっさと初期化して使いたいんだけど、
ママが一度、中身みたいって言うから、宿題やってる最中なんだよ。
そうそう、使える電子マネーとかポイントとかも、使わないと
いけないかもって言われて、それもそうだし。
でも、
暗証番号、わかんねえし。


もう、親父の身の回りの番号、全部、試したし、
まさか!と思ってママの身の回りの番号も、全部、試したし。


あああああ。もう、何やってんだろ、あたしーーーーっ!


ん?あたし?

あたしの誕生日ー、3月17日。 0317


やだ、あたしの誕生日じゃない。気持ち悪ーい。


なーんか、親父くさいアイコンばっかしだわー。
いつも、いじってたけど、何やってたんだろーね。あの人。


あったよ、ヤマダ電機ポイント、45289ポイントもあんじゃん。
ママの言う通りだったわ。
何、買おっかなーーーっ。


Facebook、へー、まーだ、こんなの使ってたんだ。

timeline。あったあった、そういうの。 親父、まめだねーー。


2010年3月17日 写真タイトル:娘の誕生 
あ、あたしの写真。 小さい頃の写真なんかない。って言ってたのに、
ここにあった。


親父、笑ってるよ。あたし、抱っこされてるし。なんだこれ。
すごい、ぶちゅーーってキスしてるし。



2010年9月23日 ビデオタイトル:パパが分かるのか?

ビデオもあるじゃない。ないって言ってたのに。

「ふぁはー、ふぁはー」
「おい、今、パパって言ったよ。言ったよな。パパって言ったよな?」
「ふぁはー、ふぁはー」
「今、パパって言ったよ。」

言ってないし、親父、泣きそうになってるし。なんだこれ。


2015年1月1日 ビデオタイトル:パパ大好き

「ようこ〜、ようこ。パパのこと好きかぁ?」
「うーんとね〜、パパのことは〜、、、」
「答えて、よーこ。パパのこと好きか?」
「好き」ベッドに顔をこすりつけながら
「おおおおおお。ようこは、パパのことどれくらい好きかぁ?」
「こーーーーーーーーーーーーーれくらい好きぃ〜」部屋中を走り回って、
大きさを、手で示しながら
「パパも、こーーーーーーーーーーーーーーれくらい好きぃ〜」部屋を出て行って
階段を降りて、また、上ってきて部屋に入ってきて、大きさを手で示しながら。


何これ。あたしのこと大好きな感じになってね?
笑えるし。って、


え。ちょっと待って。
そうだよ。あたし、パパのこと大好きだったじゃん。


いったいパパに何があったんだろう。


途中から、写真とか動画がなくなってる。なんでだろー。

最後の写真の日の日記を見た。


2018年10月2日
いつものように、娘を、iPhoneで撮影しようとしたら、
変態みたいに写真を取らないで。と言われた。
変態は大嫌い。とも言われた。
もう、前みたいに、娘と一緒にいろいろと
できなくなるのかもしれない。


やだ。あたし、酷い事、言ってる。


その後は、あたしに口聞いてもらえなくなったとか、
あたしが、目を会わせてくれないとか、
あたしが、パパの買った服をゴミ箱に捨てたとか、
あたしが、同じタンスにパパの服を入れないでって言ったとか、
そういうのがいっぱい見つかった。


そういうのだけでなく、
パパがあたしの将来のために、安いランチを食べたり、
コーヒー、タバコ、宴会を我慢したりして、
あたしの学費や、結婚費用を貯金してることとか
書いてあった。
会社で酷い仕打ちにあったけど、娘が結婚するまでは、
がんばろう。とかも、書いてあった。


でも、何度も書かれてたのは、
「娘が、凄くきれいになった、写真とりたい。」と
「また、いつか、パパって呼んでくれる日が来るかな?」だった。


いろいろと読んでる間に、自分のやっていることの酷さと、
それに対して、何一つ言わなかったパパが、とてもかわいそうと
思い始めた。


そして、あたしのことを一生懸命考えてくれてたのは、
パパだったと確信した。


あたし、もう少し早く、パパの好きだったこと思いだしてたら。
あたし、パパにありがとうも、ごめんも言ってないし。


パパ、ごめんなさい。パパ、ありがとう。


パパと話しをしていないから、パパがあたしに何を望んでいたか
わからないし、死んじゃったから聞けないから、


そうだ。
このiPhoneは、取っといて時々、見ればいいな。


こん中にパパが入ってるから。


あ、あたしの小さい頃もいっぱい入ってるし。笑


"----------------iPhone物語 timeline編 終わり---------------------


iPhoneのコメントとかから、その人のスタイルとか、
スタンスとかが、解析できる日が来たら、
死んでも、パパは、その中に生きてるよ。



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